意識の遠くのほうで くすぐったくて とてもうれしくて あたたかくて
まるで こどもにもどったような 幸せを感じている。
色は 淡く光る・・ピンクだ・・・そう、ピンク・・
ああ、自分はいま 夢を見ながら笑っていると
ニィは感じている。
それが だんだん 現実に近寄ってくる。
体中を もさもさと触られている感じ・・
―― ちょっと やめて、もう少し、寝ていた・・・
「いてぇっ!!!」
胸の一番敏感なところを コリッと かじられて 完全に現実に引き戻された。
「お・は・よぉ」
満面笑みのオーディーンの顔が目の前にあった。
「ああ、神ぃ・・・なにやってんすか・・さっき寝たばっかりじゃないですかぁ」
「目覚まし。もう朝だよ」
ほんの3時間前にようやく夜の闇が訪れたばかり。
しかし 北の夏の夜はとんでもなく 短い。
窓の向こうの鎧戸のすきまから わずかに白み始めた 空が覗いている。
ニィはため息をついた。
「朝だけど まだ3時半じゃないですか、さっきも・・」
やったでしょ、と言いかけて 自分で恥ずかしくなり 言葉を詰めた。
「そうか、じゃぁ、ニィ君もうちょっとおやすみ。
わし、好きなようにさせてもらうから、気にしないで」
「気にしますよ。
北の夜の神は急ぎすぎです」
「“俊足”? あれは夏には南の地平線まで遠征にいっているから、
ちょっぴり顔を出すとすぐにまた 見えなくなってしまう・・
ヴァルハラでは 短すぎる夜に文句をいったこともあったけれど
いまは こうして君を起こすのが楽しくて楽しくて・・・・ん?ニィ君怒ってる?」
「おかしなカミサマだ。
すごく威厳があるかとおもえば
こうして 少年のような顔をされる。
・・・神、もうすこしだけ、 休みましょうよ。
俺はどこにもいかない。ここにいます。俊足の神のように 急いだりしません。
だから
次に目を覚ますときに・・・」
そのあとの言葉を ニィは チュッと軽いキッスに代えた。
そのまま 枕を抱くように 顔をうずめると 目を閉じる。
髪に指を差し入れて ゆっくり梳(くしけず)られるのを感じていると
ふわりふわり 眠りに落ちていく。
「・・・おやすみ わしの かわいい人」
オーディーンも立てていた肘を折る。
穏やかな時間。
やがて 神にも 深い眠りが訪れる
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