境界線 <Chapter One>
¶第一章 真実の在処
  (BGM ON) 魔王魂

*その手に剣をとれ***

***

「ふえ〜〜〜、たいくつだなぁっ!
なんか でてこねぇかなぁ!

おおい バルカンの悪魔どもぉ!
冥王を倒したダンテ様が ここにいるぜぇ・・」
「うるさい。
俺は快適に 走ってるのがいいんだ」

闇のダンテが背中の上のほうからなんだかんだと 声をかけてくる。

「いい天気、そこそこの舗装道路、
前からも後ろからも車一台、ひとっこひとりきやしない。
道はダンテ様の独占状態だ。
寝ちまいそうだろ。
だから俺が相手してやってんだ。

どぉ いっぱつしない? 誰も見てないよ」
「想像もできねぇよ! ひっこんでろ」
「やだねぇ、俺はお前の心の中を言葉にしてるんだぜ。
恋人とのさよならも あっさり・・・
もてあましてるだろ。
大丈夫だ、もし見られても、周りからはマス掻いてるようにしか見えないからさ」
「やかましい、コロすぞ」
「・・・なんてこと いってるあいだに・・・」
「・・・ああ、わかっている」

さっきから 道沿いの潅木が不自然に揺れている。

空気が澱み、時間さえも緩慢になったようだ。
風景は 色の区別を失い、その輪郭も 血がつたうようにどろりと 流れていく。

魔の口が開く。

「そうして 一日に一度は俺を確かめに来るのか」

ダンテはいったん背の銃に手をかけたが
ふっと 声を聴いたような気がした

「剣をとれ」

ダンテは その右手に彼の剣を顕した。



鉄馬の剣士は 
風を裂き
群がる 魔を 裂く。

哀れな使い魔たちは主(あるじ)の余興の道具にすぎず
無駄な威嚇も遠吠えに終わり
抵抗もできず 
なぎ払われ
砂塵に帰すのみの 役割を与えられたのだ。

ほどなく あたりのようすはもとの明るい風景にもどった。

「試してるな・・・」
ダンテはそのまま 剣を背に戻した。



「闇よ。 きさまか。声をかけたのは」
「・・・なんのことだ」
「剣を取れと・・・」
「知らんな。 どういう意味だ」
「ほぉ・・・知れ顔のおまえでもわからないことが あるんだな」
「ふん、 おまえと 俺が両立して完成だ。 
俺としては不本意なところではあるがな。
それでも 俺が本来のお前の姿に近い分、
お前のしらないこと、知ろうとしなかったことを知ってるのかもしれないぜ。
とにかく、その声は 俺ではない」

すると、ふたたび ささやきが聴こえる。

「剣が新たな縁に導く」

「まただ・・・。あの声だ。闇よ、おまえにはあの声が・・」
「・・ああ、聞こえた。懐かしいなにかだ」
「懐かしい?」
「俺はお前の無意識の中の存在だ。
俺は知ってる、あの声・・・たぶん。それは おまえも知っているということだ」
ダンテには 闇がなにか戸惑っているように見えた。
「わからないな。だけど・・・」
そこでようやくダンテは気付いた。
昨夜、バイオリンの音とシンクロして聴こええてきたものとおなじだ・・・

「縁?」

思考をめぐらせても 声の主もその意味も なにも思いつかない。
「あわてることはない。先は長いんだ」
闇のダンテがいう。
「おまえはきっと答えを見つける。そして 俺も、なにかの結論に達するんだろうな」
「結論?」
「ああ。どんな形になるのか、俺にもわからない。
けど、感じるんだ。俺の、そして おまえのひとつの 結論だ」
「変に神妙だな。パッと行こうぜ、パアッとな!」
「ははっ、いつもとは逆だな。
さて ダンテさん、行き先は・・」
「北西だ!」

次の町に入る手前で
ダンテは旅の一団のキャンプを見つけた。

「昨日のロマ・・・
もうこんなところまで?」

興味を引かれ
ダンテはバイクをそちらに向けて走らせた。




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