境界線 <Chapter One>
¶第一章 真実の在処
  (BGM ON) Hagall

*剣の秘密〜il segreto della spada Cyamato***

***
「じゃぁ、あとの二本は どうなったんだろう」
「それぞれの剣は 持つべき宿命を負ったものの手に渡る。
リベリオンが 君の手にわたったのも偶然じゃない。」
そう 答えたのは レイハンだった。

「アニキもひとつもっている」
「最後の剣、希望の剣は 正しく求める者の手に渡るという
別の言い伝えがあるんだ。
だから兄さんが手にしたのは、おそらく 力の剣だ」
「名前があるのか? やっぱし」
「ふむ・・・・
別の詩のなかでは ウアマータと あるが、それだといわれているよ。
意味はわからない。 
兄さんの剣は 美しいものかね」
「ああ、すばらしい。
俺のは大剣で いかにも退魔の剣ってかんじなんだが
兄貴のは 細身で 鋭くて
気を込めて振ると 蒼い光跡を残す」

「闇の者は 東方で 清廉な精神にであったという。
その精神が込められ、それはそれは美しい形となっていると きく・・・」
「ウアマータというのは その国の言葉か?」
「わからない。
ひとつだけ 綴りが残っている。
それを 読むと ウアマータと発音できるんだよ」
「綴り?」

アマヤはそばの小枝を拾い
地面に 綴った

yamato

「ヤマト・・・」
「ああ、 あなたの国では そう 読むんだね。
y は ウー

アクセントが他の母音にあるとき、
o は ア と発音されるんだよ。」
「y が ウー・・」
「ほかにも c が エス
p は エル
h は エヌ
b は v と同じ発音で ヴェーと読むんだよ」
「へぇ、おもしろいな。
DANTE はどう 読めるんだい?」
「ダンティェ」

そのとたん
うしろから 小さな腕がまわってきた。

「ダンチェェェィ・・・あそぼ?」
「じゃぁ、 いっしょに 踊ろうか!」

ダンテは 子どもたちと一緒に輪の中ほどにはいり
バイオリンにあわせて踊った。

「ヤマト・・リベリオン・・」
二つの言葉が鐘の音のように
頭に響きわたる。

その中で ダンテは アマヤからは語られなかった
言葉を聞く。

「ワタシヲモトメヨ・・・」

歌は言葉としてではなく
水が流れ込むように
ダンテに染み渡る。
アマヤ達にさえ わからなかった
ヒトあらざる者たちの ことば
それが
血となり
指の先 髪の一本までも
熱くしていくのを感じた。

激しく燃え上がる焚き火の炎のゆらぎとあわさり
まるで術にかけられたように
ダンテは 陶酔していくのだった。





***

「レイハン・・」
「はい、アマヤ」
「時は すでに流れ出していたんだね。
わたしは その伝説を この目で見ることができた、
最高に幸せな 詩(うた)人なのかもしれない・・」

アマヤは 炎の中に浮かぶダンテのシルエットを
目を細めて 眺めるのだった。





***


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