Pride

1 策略の始まり (♪: Breeze:あおいとりのうた)


屋外イベント会場は 
女の子達の黄色い悲鳴でわれるようだった。

街がこの地に作られた歴史的な記念日で
市民総出の祭だ。

いまここのイベント会場で行われているのは
ベストスクールガール&スクールボーイコンテスト。

いってみれば学生の美人美男コンテストなのだが
きわめてポジティブで、
若いころを懐かしむ親たちまでもが 
楽しんでいる。
優勝した男女は みんなにはやされながら
ステージでダンスを披露するのだ。
その後会場全体がダンスホールになり
この場をきっかけに結婚したカップルも少なくない。

街のものならだれでも投票ができるしくみで
「うちの子を・・・」という親が、選挙戦ばりに周囲に働きかけることもあるほど
熱いイベントだ。

女子は 前評判どおり大型スーパーの娘のブリジットジョーンズ
男子は 今年は同点で2人名前が挙げられた。
どちらも人気があり
それで 大騒ぎになったというわけだ

「バージル・キングスレイ、 ダニエル・セリアス!」

司会者は観衆を煽るようにつづける。
「こりゃぁたいへんだ!プリンセスのお相手がふたりになっちまった!
 さ、ふたり ステージにあがってきて!
ほら いそいで!」





「兄貴ぃ、呼ばれてるぞ」
「やだ」
「いいじゃん。おもしろいからいけよ」
「おもしろいって、なんだ!おまえ代わりにいけ」

そうしてぐずぐずしていたが
主催者側のスタッフにひきずられるようにして
バージルはステージにあがらされていた。

残されたダンテ。
遊び友達のエンゾと並んでいる。
「なぁ、おめえら、双子・・・だよな」
「そ。」
「あわれだな」
「だれが」
「おめ」
「いうな」
「なにがちがうんだろな」
「兄貴はかっこいいよ」
「そうだな、どことなく上品だし」
「上品!?・・・俺は?」
「どことなく、抜けてる」
「なんだよっ、それっ!」
「まぁ 気にするな。俺はおめぇのほうがフレンドリーだと思うよ。
兄貴はちょっと近寄りがたいフンイキを持ってる」
「なんでそうなるんだろな・・・」
「・・・眼の力・・・かな」
「・・・・こうしたら、どう?」
ダンテはエンゾに顔を向け
しかめっ面をして見せたが
大笑いされてしまった。

壇上ではイベントが進んでいる

「さて、最終的にはプリンセスのキスを受けたほうをベストボーイに・・」
司会者のことばに いっせいに女子の悲鳴があがる

「やだぁ!」「やめてぇ!」

男子も大騒ぎだ
「あとで奢れぇ!」「チクショーうらやましすぎっぞー」
「俺がキスしてやるぅ」

当の3人はどうしていいかわからず 曖昧に笑っているだけだったが
ダニエルがおおげさに時計を見て言った。

「あぁぁ!すいませぇん、俺、もういかなきゃ。
南のガルフでいい波立つんです。明日朝はやいんで。
バージル、あと頼むぜ!それから

弟、借りるぜ。

じゃ、すみませ〜ん」

そういうと身をひるがえすようにしてステージを飛び降りる。

「ん? ちょ、まて。ダンテ借りるって、何!!? おいっ」



あとを追おうとしたバージルをスタッフが3人がかりでおさえこんだ。
「にげちゃだめよぉ、バージル!
さて みなさん ハプニングにより 今年のベストスクールボーイは
バージル・キングスレイ!」

会場は また わーっという歓声につつまれていた。

あっけにとられて成り行きをみていたダンテのそばにやってきたダニエル。
ダンテの肩をかかえると、ひっぱりあげるようにして
「いこうぜっ!」と 誘う。
返事もさせないで 会場から連れ出したのだった。







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