Pride

3 夕陽の器 (♪: 煉獄庭園)




最後の朱に燃える太陽が 水平線の向こうに落ちようとしている
「ダンテ そこ 座ってて」
ダニエルは 海と太陽をバックにシルエットになって見えた
手のひらを器のようにしてかざす・・・

(あいつ・・なにしようとしてるの?)
いぶかっているダンテに
ダニエルが声をかけた。
「俺の手のひらに 太陽が乗ってる?」
「え? あ、・・・もうすこし下へ」

夕日はダニエルの手のひらに受け止められていた



たった それだけのシーンを見せようと
彼は空間を飛んだ。
そしてそれをダンテに見てもらえたことを
ほんとに 喜んでいるようだ。
「うぉ〜!めちゃめちゃ・・・きれいだな」
「ほんと? おまえもやってみて」
「どう?俺も太陽を乗せた?」

「うん・・・すごくきれいだ・・・」

―― この指のすき間から
あたたかな太陽はさらさらと流れ落ちてしまう。
そのまま 掴んでいたいのに―― 

そして 太陽は足早に海に沈み、闇が取って代わったのだった。

***

村に一軒だけの酒場には5色の電球がともる。
安っぽい光がかえってなまめかしい。
酔っ払いがひとり出てきて ダニエルに声を掛ける
「おう! ダンテ! 今日はツレがいるのか。
明日の波はいい感じになるだろうよ。
俺っちたち、魚とりには最悪だけどな。
ま、楽しめ!」

「ダンテ?」
「あ、ああ・・・
あいつらが勝手に聞きマチガイを・・・
ニックネームみたいなもんだから、気にしないで。
ちょっとまってて、酒一本もらってくるわ。」
「酒? 俺飲めねえ・・・って」

ダニエルはテキーラとオレンジジュースと小さな包みをロスメンに持ち込んだ。

そのロスメンはコンクリートの箱みたいなもので、扉代わりにこのあたりの織物が一枚。
シャワー・・といってもホースが一本かけてあるだけ。
仕切りのない便所。
部屋の隅のコンクリートの段はベッド代わりで、ここにも織物がかけてあった。

ただこざっぱりと掃除されていたのだった。

寝台の織物を床に敷き
ふたりは向かい合う。
テキーラのジュース割りと
塩茹でのピーナッツが少し。

ダンテはこころにひっかけていたことを口にした

「ダニエル・・・おまえ、何者?」

「・・・悪者」






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