Pride

4 呪縛 (♪: 煉獄庭園)






「ダニエル・・・おまえ、何者?」
「悪者」





「魔族か・・」
「醜く、低俗で、いつも尻尾をまいてふるえている。
なぜ この世に存在したのか、
いても いなくても どうでもいい 意味のない存在・・」
「どうしてそんないいかたする?
この世界で おまえってすごく憧れの的じゃないか。
俺なんか おまえにばかにされてるとおもってたけどな。
すげ、なんつーか、きれいな顔してるし」
「このすがたは 作り物、偽物だ。
クールに 傲慢なくらいに振舞っていないと 俺は自分を保てない。
いいな、人間の世界は。
ちょっときれいだと みんなに注目され、もてはやされる。
故郷での扱いとはまるで逆だ。」

***

彼は故郷での暮らしを語った。

「人間界でいう 東ヨーロッパの裏の世界にあたるところ・・・
そこに俺の故郷がある。
公爵・・上位の魔族だな。そいつに飼われてたんだ。

ヤツのでかい部屋にしつらえられた檻が俺の場所。
食うときも、寝る時も、用を足すときも アイツが見てる。
本を読むことは許されていた。それしかできなかった・・・

たまに檻からだされるときは
ヤツの慰み者になるか
諸侯の集まりの余興の道具・・」
「やめろ。もういい。」
「なぜだ。
ふつうのことだ。

聞けよ。
ここからさき、俺とおまえの出会いの話さ。
俺がおまえを見つけた、っていうのが正しいな。

諸侯が集まれば、どこの誰が隆盛だとか 落ちぶれたとか
互いに攻め入る機会狙った探りあいさ。
そんなとき、冥王が倒されたってビッグニュースだ。
倒したのは 俺と同じくらいの若いやつだってきいた。

俺は マスターにはじめてわがままをいった。
どんなやつか みせてくれって。
意外にも願いはすんなり聞き入れられた。

初めて下りる人間の世界で
俺はおまえ達を見た。
強い絆で結ばれてるふたりだ。
ただ・・・
ひとりは
俺と似た影を背負ってる
もうひとりは
見たことも感じたこともないものを
纏っている・・・」
「俺?」
「俺は・・そいつから眼が離せない。
離したらなにか大切なものを見失い、永久に感じられなくなるような気がした。
なにか、あったかいものだ・・・わからない。
不思議なものだった。

俺の様子をみて、
マスターの酔狂が始まった。

俺は人間の姿を与えられ
堕とされた。
うまくいかなくても
またもとの飼い猫の生活に戻ればいい。
勝てば・・・
自由がもらえる。

人々の記憶は置き換えられ
あたかもずっと以前からそうであったように、
俺はある夫婦の息子として生活している」

「酔狂ってなんだ。言え。
俺に係ることだな。
何を狙っている。
おまえ、すっごく かわいそうなやつだな・・・だけど
命はやんねえぞ!
てめえと戦ってでも
俺は帰る!

なんだよいじいじしやがって。
そんなマスターほっといて
さっさとこのまま 逃げちまえばいいんだよ。
そのためなら

なんでもする!」

「・・・今日はここまでにしよう。
ダンテ
俺は明日 おまえに
あの海に抱かれる悦びを味わって欲しいと
ほんとに思ってる。
だから
もう
休もう。」

「ダ・・・

くそっ
なんだってんだ
俺、さっぱりわかんねぇわ!

(ダニエル・・・ホントのおまえが知りたい。
てめえが俺の何狙ってるのかわかんねえけど、
俺はてめえをつれて帰る。一緒に、帰るんだ。
一緒に)」

そうおもったとき
ふいにテキーラの酔いがまわってきて
ダンテはひっくり返るようにして
その場に横になったのだった

***






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