Pride

5 獣人 効果音ON




<獣人>

その日の晩はほぼ満月で
白い光をロスメンに投げかけてきた。

まぶたを刺激され ダンテはふと意識を取り戻した
ダニエルの姿がない
「浜・・・にでもいったのか?」

しんとした通りを抜け 浜につづく林の間
人影をみつけた。

人影・・・というのとは
少し違う。
月が映し出していたのは
半獣の魔物だった
四肢は山猫のそれだった。

うつむき 己を呪っていた
「この躯が嫌いだ
醜く 穢れたカラダが 憎い・・・」





(ばかっ)

ダンテはダニエルに駆け寄ろうとした。
そのとき
空間を割って 人型の悪魔が現れた

「おまえのゲームの結末を楽しみにしている」
「マスター・・・」
「這え」

『マスター』はダニエルに轡(くつわ)をかませ、
さらに首と下腹部を拘束し引き絞った。

ダニエルの目はだんだんと生気をうしない
虚ろになっていく。
学校で見慣れた
美しく 自信たっぷりの彼は微塵もなかった。





いま 自分がでていけば
ダニエルの首は簡単にへし折られ
殺されてしまうだろう

またその姿を見られたダニエルも
どんな衝撃を受けるだろう・・・

怒りを押し込めて
ダンテはもと来た道を戻る。
うしろで 『マスター』が 安っぽい喘ぎ声をあげていた

寝付かれないままでいると
風が変わり、朝が近づいてきたことを知らせる。
潮のかおりが流れ込んでくる

ダニエルの気配がもどってきた。
ダンテは自分に注がれている彼の目を感じた。
しばらくすると
ふと肩先にくちづけされ
おもわず目をひらこうとしたが
触れた頬に涙があり
そのまま寝たふりを決め込んだ

水を浴びる音がしたかとおもうと
ダニエルが声をかけてきた

「ダンテ、起きろ。朝飯前に一発行くぜ」

『シャワー室』からでてきたダニエルには
いつもの きれいな笑顔が戻っていた。








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