Pride

7 ナチュラルハイA ♪煉獄庭園



初めてのパドリングはなかなかうまくいかない。
ダンテはダニエルと同じようにしているつもりだが、
どんどん先にいかれてしまう。
「まってくれぇぇ・・」
ダニエルの言う「ポイント」に着くまでに
なんどか正面から波をうけたが、想像以上に大きく見えるものだ。
それは水の壁だ。
大きいものは中をくぐり、
それほどでもないものは越える。
そのたびに板の下からのパワーを感じ
徐々に「波」のなにかが分かってくるような気がした。



沖のポイントでダニエルは板にまたがり波に揺られていた。





「でかいよね、海。
このまんま沖にひきずられたらどうしようなんて
ぽかんって不安でたまらなくなることもあるよ・・・」
「それはダニエルにまだ 生きてる希望とかよろこびがある
証拠だな」
「そうかな・・・俺は
ひとりぼっちがたまらなくこわい。」
「でも ここへはいつもひとりでくるんだろ?」
「そう、ひとりぼっちで こわくてたまらなくして、
おいつめておいつめて
そうすることで
・・・・つらさを忘れるんだ。」
「逃げろよ、・・・あのジジイから」
「やっぱ 見てたんだな・・・
だけど ひとりぼっちでいるよりも
マスターにかまってもらえるほうがマシだって・・・
いつも もとのモクアミ・・

来た!
ダンテ、俺、先いくぜ。見てなよ!」

****

「ばか・・・・あきらめてんじゃねぇよ・・・

おし、俺様もやってみます!」

次の波を捉える。
板はパンパンパンと波を叩くように撥ねる。
右の軸足で波をおさえつけ
前にだした左足でスピードをコントロールする。
「おれ、天才?」

へっへー!と思った瞬間バランスをうしない波に弾き飛ばされた。





波のあいだでぐるぐると回る。
どっちが上なのか下なのかわからない・・



すっと伸びた手につかまれ
水から脱出した。

たちあがってみれば 腰の辺りの深さ・・・・
目の前にダニエルが笑っている。
「うちあげられたトドのようだった・・・・ブハッ・・・」
「クッソー・・・ハ・・ハ・・グハハハハハ」





ふたりに出遅れた朝日が あたりの風景に鮮やかな色を置き始める。
太陽の白と空の青は その日の暑さを 予告していた。









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