Pride

8 歪んだ視界 ♪煉獄庭園



昼の暑さは ほんとうに半端じゃなかった。

朝 数本の波に乗った。
大潮の日で
ダニエルには期待通りだったようだ。

ゆうべはあまり寝ていないし、
朝の疲れもあって
ふたりは冷たく薄暗いロスメンでごろごろしていた。

「ちょっと飲まない?」
「酒?・・・う〜んすこし。
いいかんじになれそう」
「なるさ」
いい香りの酒だとおもった。
疲れのせいか
一杯ほどでふわっとした気分になってきた。
「こんなものもあるぜ」

ダニエルがとりだしたのは
おおきな黒檀のパイプでペニスをかたどっていた
「うわー趣味悪っ!てか でかっ」
「村のおやじがくれた。」
「ちょっと貸せ。
ほれ、こんなのついてたら気持ちわりぃ!」
自分にあててダンテは笑った。

「これはこうつかうんだよ」

パイプになにか葉をつめて、
ダニエルは火をつけた。

甘いにおいがする。

「たばこ?やめろよ。死ぬぞ!」
「ちがうよ。」

ダニエルはペニスの先に口をつけ煙を吸った。
それがやたらなまめかしくて
ダンテはドキッとした。

いきなり
ダニエルは口移しで煙をふきこんできた。

「ン・・・やめ・・」
ふりはらい たちあがろうとしたとき
ふらついて足をとられた・。

「なんだ・・・これ・・」

部屋がぐるっと回る。
部屋の奥の電球の明かりがずるっと溶けたように軌跡を描いて流れて見える。

「ダニエル・・・
これ、な・なに?」
「何もかも忘れて 幸せな気持ちにしてくれる魔法さ・・」

「こんな、こんなことが・・・ほんとにしあわせだって・・・おもって・・・」
「そうさ。

そして ダンテ、君のすべてを俺はいただく。
俺は「ダンテ」として もう一度生き直す」

「・・は? おめ・・・なに・・いって・・・」

仰向けに倒された状態で
まるで磔になったように
ダンテは起き上がれなくなっていた。

ただ、近づいてくる半獣の

哀しげで
しかし
美しい顔が

幻のように揺れて見えていた。








 前のページ  次のページ  Pride TOP  小説館トップ   総合トップ