悪魔に恋した神様

§4 弐伊25歳 運命の子

  



この西の大陸の仕事が多くなったのは うわついた人間たちのせいばかりではなく
どうやらこの北の神が自分を呼びつけているらしいと知ったときには
怒りを超えて 呆れてしまった。

ただ、自分達では剣をとらないことを旨としている神の一族にあって
オーディーンが弐伊にわざわざ見せる槍技は 力強く、称賛に値した。
しかしその後がいけない。
うちにこい、食事をしよう、なんなら一緒に住めと しつこいこと極まりない。
「いいかげんにしてくださいよ。 俺男ですから」
「いいの。いったでしょ?キレイな人大歓迎。
愛に男も女もないの。おいでよ。かわいがって・・・」
「それ以上言ったら神でもぶっとばしますよ」
「つれないねぇ・・・ところで・・・

預言の子のことは聞いているね」
「双子だときいていましたが、どうやら 預言ははずれたようだ。
その子はもうすぐ6つになるらしい」
「もうひとり生まれるよ」
「はあ・・・」
「君が護る子だ」
「いやですよ。俺、まだ自分の子もいないし、小さい子は苦手だ。
だいたい それを理由にひとりの女にしばられるのなんてまっぴらごめんだ」
「というか、他人とかかわりたくないのね」
「・・・いけませんか・・・」
「わしなら 君の自由を尊重しながら愛のある生き方をさせてあげられるよ」
「またそれですか。おかしな神だ。気持ちわるいから やめましょうよ」
「あー ひっどいなあ。こんなに優しくくどいてるのになぁ」
「いや、だから、俺 おとこですからっ。やめてくださいよ」
「ほんと つめたいな。わしの国の永久氷壁よりも冷え冷えとしておる・・・
そこをこう、じわーっと溶かしたくなっちゃうんだよねぇ」
「帰ります」
「こんどはいつ会おうかなぁ」
「神がわざわざもめごとをつくってどうするんですか。迷惑な」
「ああもう、さっきからズバズバと。こう見えても傷つきやすいんだから、わし。
まあ、あれよ。預言の子についてはちょっと興味があるから
また行っちゃおうかな」
「お好きに! では」
「お好きに・・・いいなあ!ちょっとオッケーでちゃった?でちゃった?」

もう弐伊は振り向きもしなかった。
その後姿を目で追いながら オーディーンはつぶやいた。

「でも その子と君は深くつながるんだよ。深ぁくね・・」

***







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