闇の王〜サイドストーリー
¶ 恋人たちのプロセス

§2
   





墨は重ねられ
やがて 陰影をつける

その影の部分に
ふたりだけが知る時を
塗りこめよう

そしてそこに最初のブルーを染める
星屑を散らすラピスラズリの濃紺
墨の上にのせた紺は
底の知れない 深淵の色

空間に放逐された
不安 絶望を超え
浮遊するその感覚に 酔う

この胸に お前の手を 感じていられる限り・・・
俺は 
悦びに 
酔っていられる・・・

永遠はないのだと分かっていても
俺は それを 望む

・・・?
なんだ、おねだりしてるのは
俺か・・・?
嗤っちまうな


見透かしたように
お前の薄く開いたまぶたの奥の
瞳が一瞬煌く

叡智と妖艶をまぜた
サファイアブルー

影の濃紺をサファイアで縁取り
第三のブルーを染める

一滴グリーンをおとした
ターコイズブルー

この街を彩る
ブルーの競演

対立し
そして融和する

やがて
ブルーに挿される
クリムゾンレッドの
花のモチーフ

とがった花弁をもつ
それは
チューリップ・・・だとさ

その顔で「チューリップ」はないだろ・・だと?

そういうな。
チューリップはこの国の花
「ターバン」が語源だそうだ

それに
この花は
恋人が流した血が咲いたものだって
伝説もあるんだぜ


おまえが血を流すことを
俺は 許さない
おまえの血を求めるやつがいれば
俺は 俺の血をもって
それに抗おう

***

筆を重ね
色を重ね
一枚の布に現れた
曼荼羅

そこに俺は
同じ時をすごしてきた
俺たちの世界が
重なって 見える








 前のページ  次のページ  闇の王TOP  小説館トップ   総合トップ