「蒼い月」ダンテ篇

§15 恋


***

「ん・・・・な、何・・・・。」

ダンテはハッとして顔をそむけた。




「わ、悪かったって・・・ほんとに。言いすぎた。
弐伊が、あんな 顔するからびっくりしちゃっただけだ・・・」

「そう・・なのか?」」




「そ・・そうだよ。弐伊だって俺のことなんかガキとしか思ってないくせに」



「俺は、おまえの中にある光が・・」


「光?」



「愛という 光さ。 それが 欲しい。
俺だけのために もっと 注いでほしい。
そして 俺の内にも、ほんとうの愛が、いまはある。
許されるなら、俺を、 受け入れてくれ。

信じて。
愛は あるんだ。」



「俺を・・信じて」
「弐伊・・・」






「弐伊?俺ね、たぶん、自分のキモチに気付いてた。
けど、いけないことだと思ってた。
弐伊に知られたら、弐伊がどこか遠くへ行ってしまいそうな気がした。
だから・・」
「おんなじだ」
「ふふっ、おっさんなのに」
「ああ、悪いおっさんだ」




「弐伊・・・」

「息、少し はいて・・・」

「弐伊・・・弐伊・・・!」

***

弐伊は背中に回された手が着物を ぎゅっとつかむのを感じた。
やがて 絡んだ紐が ほどけるようにその手が緩んでいった。

「弐伊、
俺・・・しあわせすぎて 溶けちまいそうだ・・・」
弐伊はそんなダンテをみおろしながら微笑んだ。
(溶かしてもらったのは、俺の 芝居じみた 頑なな こころさ)

そう思うと ふたたびいとおしさがこみあげてくるのだった。

(画:kasis)




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