「蒼い月」ダンテ篇

§18 エボニー&アイボリー 音楽を流します


***
大きな赤い月の夜
西の異国の船は 何食わぬ顔をして港の中ほどに停泊していた。
おそらく ニンゲンには 普通の貿易船にしかみえないだろうが
黒紫のオーラを吐き出し、見上げるものを圧倒する禍々しい 要塞。
弐伊の言っていた取引が、行われる。
相手は間違いなく、ニンゲンを装う悪の魔の集団。
それらが直接無道につながるかどうかはわからないが、この地で悪魔の勢力を拡げさせるわけにはいかない。

「なんかあったら きゃーでもなんでもいいから俺を呼べ」
「なにいってんだか。
こっちは 弐伊がほんっとに食われちまうんじゃないかって心配してんのにさ」



***

その日の朝

「ダンテ。見ておけ」
弐伊が構えると右腕がブンと赤く光り出したかと思うと、背丈ほどの大剣が現れた。
「すごい・・・弐伊、魔法使いだったのか!」
「ちがうわい!お前もやってみろ」
「俺も!?よし」
ダンテも構えた。しかしなにもおこらなかった。
「あれ?ははは」
「ははは、じゃない。うーん、本気が足らんな。
けれど、いいか。おまえの剣はいつでもおまえと共にあるはずだ。
剣はおまえを護り、おまえと共に敵を討つ。
現物を持ち歩くわけにはいかないからな・・・
・・・しかたがないな。これ 背中に隠しとけ」
そういって 弐伊が渡したのは、一丁の漆黒の銃だった。
「銃は初めてだろうが、お前の内側の力が 後押ししてくれる。信じて 撃て。
俺はこれだ」
弐伊の銃は象牙色の 変わったものだった。
「レアだ・・」
「レア・・・たまにわかんね言葉使うよな、弐伊って。」
「珍しい、って意味だ。学べよ!若者ぉ!
さて、 いくぞっ。おまえには初めての悪魔退治イベントだ。
やつらがしっぽを出したときがパーティの始まりだ。
派手に行くぜ。」
「了解!うぅ〜、わくわくする」

本当は緊張と不安でいっぱいのはずだ。
根っからの能天気なのか、戦闘好きの本性なのか、
それとも心配をかけまいとする精一杯のつっぱりなのか、
なんであれ、この笑顔を護りたいと、弐伊は思うのだった。

摩禰屋からは 女将、数人の使用人
そして ダンテと 弐伊。
もうひとり、
いや 一匹というべきか。

白い小さな蜘蛛に姿を変えた
新三が使用人の髪の間に
隠れていた。







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