「蒼い月」ダンテ篇 エキストラ

SS 野菊小紋A 音楽を流します




弐伊は 土手の柳の陰から川べりのダンテを見下ろしていた。
「いるいる。 毎度毎度・・・ほんっとに・・・。
あ〜あ、まだ家出から半時もたたねぇってのに
もう そわそわしてやがる。 もうすこし じらしてやろうか」


「水辺はやっぱ ちょっと冷えるな。
寒くないか?」
「・・・」
「ちびのお前に初めて会ったのがここだ。
お前、まる裸でころがってたんだぜ」
「弐伊だって、お楽しみの真っ最中だったじゃないか」
「あ・・・ 最悪な出会いだな」
「うん・・・最悪」
「昨夜はな、まっとうな商売を続けようとした廻船屋が狙われたんだ。
摩禰屋絡みの元締めが
いうことをきかない その店をとりこもうとしたわけだ。
まあ、その元締めでさえ、魔の下っ端にしかすぎないがな。
しかし、店の夫婦がやられた。息があったので 
宿野の診療所に連れて行ったんだ。
ガキがいてな。5つ6つのやんちゃな兄弟だ。
夫婦は先生にまかせて そのあいだ 子守をしたってわけだ」
「弐伊が?子守!ははっ、みたかったね」
「親がてえへんな目にあってるってのに、俺を相手におおはしゃぎだ。
よくこしらえられた 豆鉄砲で 撃たれました」
「豆鉄砲にやられたのか!」
「そ。剣で貫かれても平気な弐伊様は ガキの豆鉄砲で 痣こしらえた、ってわけだ」
「まじ?」「まじ。」



「明け方になってようやく術はおわったんだが、
ガキもぐっすりおやすみだ。そりゃそうだ。怖い目にあってるんだ。かわいそうに。
酒好きの先生もほっとしたところで 一杯ひっかけたいだろ。
ひどい傷だったからな。
なんにせよ、さすがだぜ、酔いどれ先生。

だいたいだな、見たらわかるだろう。この痣が おかしなものじゃないってことさ。
てめえが今 胸に付けてる痕と比べてみろ」
「え?・・・・・」
懐をのぞいて ダンテは顔から火を噴きそうだった。

「お前、意外に白いよな。すぐに 痕がつく・・・野菊を散らしたようだ・・・

・・・
さ、 帰ろう。卵焼きで朝飯、朝飯」
「に・・・弐伊、砂糖、入れちゃった」
「ええっ、しょうがねぇなぁ」
「・・・な・・・なめてやろうか? 傷・・」
「?」
弐伊は大笑いした。
「ああ、いいね、最高の薬だ」










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