「蒼い月」双子篇

§14 エピローグ・抱擁 音楽を流します



「おまえの兄貴はいいよなあ、
黙ってても モテモテ。
おまえは おんなじような顔してんのに
俺と 同類ってのが ふしぎぃ。」
「同類って、エンツォ てめえ・・・」
「とにかく プロムの貸衣装も
いいのは みんな借りられちゃって
あと 仮装大会みたいのしかないぜ、
どーしよ。フリルに金ぴかの蝶ネクタイもなあ・・・」
「金もねえ・・・」
エンツォは ふと 顔を寄せて小声で話しかける。
「マスターが仕事があるとかいってたから、よってみな。」

カウンターでは・・・
「バージル! あなた いったいどっちを誘うのよ!」
「すました顔してプリンなんか食べてんじゃないわよっ」
「こんばん電話してよねっ」
「しなかったら、ひどいから。」

「にいちゃん かたなしだな。」
「にいちゃんって いうな。」
「マスターんとこ いくよ」



***

宵の薄紫色の空に
大きく青白い月が浮かび
ふたりの影を映していた。

「記憶がふたつ。」
「うん。いま 街にいるけど」
「山の記憶、あるよね」
「不思議。どちらが正しくて、どちらがちがうっていうんじゃ ないんだ。」
「俺は 前の記憶も 大切にしたい。
よかったことも、・・・辛かったことも」
「受け入れることができるんだ。
よかった。」

ふたりは 半分地下になっているパブにはいっていった。
「おおぅ、悪魔狩りの兄弟、おれっちのばばぁも悪魔みたいなもんだから
いっぱつかましてやっとくれよ」
「うるせ よっぱらい。
おっさんが 昼間っから酒くらってんのが わるい」
「そうそう、おばさん 大切にしてやんなよ。」
「ひー! 餓鬼に説教喰らっちまった、だははは」

「マスター、仕事あるって・・・」
「ああ、 港の34番倉庫で悪魔の取引だ。
潰してくれ。」

「・・・・・・四・・四の字!!」
バージルは 四の胸に飛び込んでいく

「・・・・ダンテ、わりい、少し、時間くれない?
銃の調子でも 
チェックしてもらっといた方が
いいぜ・・・」
「・・・あ、う、うん。そうする。」

ダンテはひとりで 店をでた。

「バージル・・・」
うれしかった。
それは はしゃぐような嬉しさではなく、
しずかな 感動だった。
「銃・・・か。
そういえば トリガーちょっとみてもらお。」
なじみのガンスミスの店へ。
「なじみ・・・?
ははっ、なんか 記憶があるのかないのか、曖昧だ」
「アリスの店」と小さな看板。
その名の通り 扉が小さく、
開けるとすぐに細い階段が上に向かっている。

「Hi, ya」

狭い部屋に似合わない机に 足を乗せ
黒シャツの男が そっくり返って寝ている。
「はぁ?」
めんどくさそうに顔をあげたが
にっと笑って 言った。

「・・・オスっ、まってたぜ。
新しい世界へ ようこそ」

弐伊とダンテはゆっくりと 抱擁する。

長く その時が続けと、
願うように。










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