「蒼い月」双子篇

§7 善なる神@




「ようこそ・・・
君達が 神であるわたしの 一部分に 加わることを
歓迎しよう」

闇の空間の中で
バージルとダンテ、そして 無道が対峙していた。

「わたしは神だ。
ニンゲンの、
いや 生きとし生けるもの 全ての本能を司る
神だ」
「なるほど・・・貴様が 究極の悪の神というなら
それも 有りとしよう。
でも 同時に 善なる神も存在するはずだ。
どこだ、 まさか とって食った、なんて いわないだろうな。」
「そうだよ。 人は欲望だけじゃないんだ。
愛があって 慈しむことを知ってる。
ぼくは ニンゲンの ニンゲンらしさを 信じる」

「善なる神か・・・・。
笑止!!!
それは まさに 偽善!
偶像にすぎん!
善なる神は はじめから存在しない」
「いいかげんなこというな!」
「青いのぉ、バージル・・・
わたしは みなのこころを 自由にする、まさに神ではないか。
おまえは 善なる神を見たのか?
そんなものは 実在しない」

「見よ。
貴様らが慕うもの達の 本当の姿を・・」

無道は手のひらを下に向け
大きな円を描くように 空間を切り開いた。

3人の遥か下に 真っ赤に燃え上がる 
ニンゲンの世界がひろがった。

「愚かなものよのお。
果てしない憎悪、
深みにはまってゆく 疑念
人間の語る愛など 所詮 些末。
狭小な己の欲する範囲にしかすぎぬ。
見よ。 すでに ヒトの顔を失ったものたちを。」

そのとき 兄弟はその争いの中に見つけた。
魔をなぎ払いながら進む者を。

「四!」
「弐伊!」

ふたりにはそれぞれ 別のものに見えていた。

そのものは ふとたちどまり 傍らにうずくまる 女をみつめていた。
やおら その女の頭をつかみ地面にたたきつけると
考えつく あらゆる残酷な手段で
女を犯し始めた

そして 最後に 女の乳房を食いちぎり 捨てた。

「こんなものを 見せて、どうなる」
「ぼくらを 試そうとしてるのか」

幻の四も 弐伊も消え、下級悪魔の姿に変わった。








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