「蒼い月」双子篇

§8 光の鎖




無道は 大きく身体を反らし
両の拳に 気をためると
黒紫色の魔弾にして ふたりに放った。

ふたりは 左右にわかれ
無道の両サイドに 回りこむように走る
ふたりの間には 白い光の鎖がつながっている

走る勢いで 魔弾は鎖に裂かれ
さらにそのまま 無道にからんで 巨体の動きを封じる。

バージルが右手から
ダンテが 左手から
猛然と無道めがけて剣を打ち込む

しかし 寸前で 無道は 上に逃れた。

「うわっ やべっ」
「もうちょっとで 同士討ちだぜ」
「ダンテ、さっきの 鎖はなんだ」
「ぼくたちの・・・・キモチ?あはは」
「あはは、って 気楽な奴だな。
そうか、ふたりが必要というのは こういうことなんだな」

「そのキモチとやら、どれほどのものかのぉ・・・
すぐに その底もしれるわっ!
ゆけっ、我が 下僕よ」

無道がふたりの前に現したのは
紫色のオーラにつつまれた
四だった。
四は ゆっくり剣をふりかぶると
次の瞬間バージルの眼前に現れ
切りかかった。

ジャキーンと音をたて
その剣をブロックしたのは
ダンテだった。
彼は腕で四の剣を止めた。

「バージル!これは 四兄ぃじゃない。
わかるよねっ。
しっかりして!」
ダンテはそのまま 四を腕で突き放した。
バージルはまだ 凍りついたように動かない。
「バージル!!」
突き放された四が こんどは ダンテに襲い掛かる。
その剣が ダンテの鼻先にかかろうとしたとき

偽りの四は砂粒に姿を変えた。
「ごめん、俺、まだ 弱いね。
まだ 惑わされる」
砂粒のむこうに バージルが微笑んだ。
「鎖が僕らの絆の証なら
それで 無道をからめとっていけばいいんだな」
「そういうことかな、よし もういちどだ。
よく互いの動きを見ていこうぜ」

ふたたび ふたりは 左右に、そして 上下に
無道を翻弄し始めた。

「ダンテ・・・なにを そんなに焦る。
俺が ここに いるのに・・・」

バージルを遥か下に見下ろす位置にいて、
ダンテの背後から腕が回ってきた。

「!! 弐伊!」
そのあたたかさは 紛れもなく弐伊だと感じた。
しかし その弐伊は ダンテの胸に深々と
手刀をたて、 貫いていく。
胸から、口から 血が吹き上げる。
「おまえのその 甘さが いとおしよ・・・」
吐き出される血を舐めながら
弐伊の姿をした魔が笑う。
(バージル・・・・)
唇だけが 兄を呼ぶ。
ふたりの間にあった 光の鎖が
パラッ パラッと 
切れ始めた










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