「蒼い月」双子篇

§9 命の繭玉




「ダンテッ・・・・ダンテーーー」

崩壊していく 鎖を 手繰るように バージルが跳ぶ。

「待てっ」
無道の腕が それを とめた。
「あやつは もう終わりだ。
ニンゲンの血を多く継ぐとは
やつの 不幸であった。
もうよい。 おまえはわしのもとへ・・」
「やかましい! どけっ!!」

無道の額、両手、両足に 青い幻影の 杭が打ち込まれる
「ぬぉっ・・! き・・きさま・・!」
「そこで しばらく じっとしていろ。
とどめは あとで ゆっくり さしてやる・・」

***

「人のこころを おもちゃにすんじゃねぇよ」

ダンテの血をすするのに夢中になっていた 魔物は
一瞬で 両断された。

「ダンテ、ダンテ・・・おいっ
なんだよ・・・ にせものなんかに やられてんじゃねえよ。」
「わりぃ・・・ちょっと 失敗した。」
「俺一人じゃ あの鎖はつくれねえ。
おまえ 休んでる場合じゃないぜ。」
「ちょ、ちょっとだけ、 だめかな・・・」
「だめだ。だめなんだよ。 おいっ
起きろよ。 寝るなよっ!!」
「・・・・」
「うくっ・・・・
・・・・
・・・ 父さん、母さん・・・
俺達に命をくれたように・・・
もういちど 力を 貸して・・・・」



ふたりの からだから
細く ほの青い 光の糸がたちあがる。
糸は ふたりを巻くように
長く 細く立ち上がり続ける。
それは まるで 繭玉。

幻影の杭から 逃れた無道が
狂ったように繭玉をつぶそうとするが
弾かれて のけぞる。

いま ふたりは 命のときを取り戻す
繭に つつまれた。









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