境界線 <プロローグ
 



<海峡を越えて西へ>

1時間前に 国境を越えた。

山がそのまま海になだれ落ちたようで
道は 山と海の際
海岸線をなぞるように ワインディングしている。

海は 目を見張る美しいブルーだが
見惚れてはいられない 細かなカーブの連続で
ダンテはリズミカルにアクセルを煽りながら
切り返しを続けていた。
990ccのモタードバイクは人懐っこい馬のように
従順で嬉しげに回っている。

街を抜けてから 空気は一変して清涼になり
甘ささえ感じさせた。
彼は左手でマスクを下げると
頭を振って
大きく息を吸い込んだ。

****





夜明け前。

四とバージルの案内で
酒場の奥のポータルから
アジアの西の果て、テュルキスタにある
マダム・ハピの敷地内の魔ポータルまで
バイクもろとも 飛んだ。

弐伊はこなかった。

南米の小国の沖合いにあるE王領の城塞島に呼ばれてしまった、と
言い訳をした。

***








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