境界線 <Chapter Zero>
(BGM ON) | pmeloo frozen night |
*見つからない言葉***
時間はもうすこし遡る。
前夜。
旅の支度を全て終え一呼吸おいたところで
なにかいいたげな兄を残してうちを出た。
唇をきゅっと結んでいるアニキの顔が浮かぶ。
たぶん アイツも愚痴をこぼすのにかこつけて
恋人の所にでかけるだろう・・・。
まだ さほど 遅くはない時間だが
通りは静まり返っており 自分の足音ばかりが響く
どんな顔してるんだろ、今、オレ・・・
最初に なんて言おう・・
「元気?」
じゃないよな、昨日も会った。
「行ってくるから」
いや、それは最後に言おう。
「・・・」
振り仰ぎ,月に助けを求めても
ぼんやりした白い光を投げかけるばかりだ。
別れに相応しい言葉を
別れ?
別れるんじゃないんだ。
ちょっと出かけるだけだ。
浮かばない言葉に多少あせりながらも
足は 弐伊のアパートへ近づいていく。
***
***