境界線 <Chapter Zero>

  (BGM ON)   H-Mix moment

*扉の隔てる距離***

***

時間は流れ続ける

特別なことなど 何もない。
いつものようにふざけ合い
いつものように他愛もない話をする。
ダンテの口数が 弐伊の倍も多いのもいつものことだが
この夜はさらに増えた。

チューンナップしたバイクのこと
友達が婚約したこと
バージルとのくだらない喧嘩のこと
バージルが女の子に言い寄られて困っていたこと
バージルが欲張ってプリンを食べすぎて腹を壊したこと
バージルがどうやら さびしがっていること・・・・・

「兄貴のことはちゃんと俺たちが見ているから 大丈夫だよ」
笑いながらダンテの話を聞いていた弐伊が言った。

「うん、あいつ ちょっと脆いとこあるから頼むね」
「わかっている・・
さて、もう行くか?
遅くなっちまった。
明日、早いだろ?」
「うん、じゃ、行くよ」
「気をつけてな。 
次に会うときを 楽しみにしている」

一度閉じかけたドアを押し戻し
ダンテは黙って弐伊の頬にくちづけて
踵を返した。

***

弐伊はドアに背を預け階段を降りる足音を聞いていた。
ふとその足音が
バタバタと駆け上がってくる。
足音は ドアの向こうで止まり
手のひらが当てられるのを
感じた。
しかし、そのドアは開けられることがなく、
ふたたび 足音は駆け足で去っていった。


*****










それは 鼓動が聞こえるほど 近く
どんなに 手を伸ばしても 届かないほど 遠い

望むまま、欲するままにできるなら 簡単に触れる
しかし 決意が それを 許さない

終わりではなく
「次」のはじまりだから

耐えられる

いや それ以上に
この距離に
濃密な絆を感じられることを
幸せに 思おう

行っておいで
ドア越しの 温かさが言う

行ってくるね
軽い足音が
そう 伝えてくる

You will receive the crown of life
that the king of lights has promised.

Farewell my dear, for now.


***



(480ピクセルの恋人)




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