君の胸に竜は眠る

(♪あおいとりのうた : Crystal Road)


§エピローグ・友へ

前に星を見上げたとき
この腕の下に おまえがいた。
少し・・ふるえていた
あれは 冷たい夜風のせいだったのか、それとも・・

白状する。
俺はすこしだけ ときめいた。
ああ、ときめいた。 
まるで 初恋におちた娘のように。
それをおまえに気取られないように 取り繕うのも大変だったんだぜ。
こんな俺に おまえはまた言うだろうか、
「てめえ、いっぺんぶっころす」

あの最後の夜以来さ、こんなに ちゃんと 星を見上げたのは



いま 俺の腕の中
のんきに眠っているのは 例の「預言の子」なんだぜ、笑っちゃうよな。
こんなに青臭くて、わがままで、世間知らずで・・・幼い
よく見れば・・かわいらしいと、いえなくもないか・・
なのに、大きな宿命を背負わされている・・・

おまえのことが思い出にかわるかもしれない・・
それを おまえは許してくれるだろうか。

いや、わかっている。
おまえは俺に 罪の意識を強いたりはしない。
引きずっているのは 俺の勝手だ。
悔やみ続けることで
自分を憐れみ、慰めていた。
だけど・・

俺は俺のすべてを
このこどもに向けてやるべきなのだろう。
全身全霊を俺に預けてくる、それに応えてやりたい。

愛すること
それが俺にもできるだろうか。
愛することに 理由をつける必要はないのだと
理解はしているが
愛を失う瞬間が怖いのだと
俺のこころの奥底が訴える。

いまこの子が俺の閉ざしたこころの扉をたたいている。
いちどは おまえが開いてくれた扉は
あの日以来 閉じたままだ。

しかし なにかが変わっていく。
おまえのいた日々を
哀しい色に塗りつぶすのは やめよう。
それは輝いていたはずだ。
あの星たちのように。
その彼方から
ネロ・・
おまえは 微笑んで 見ていてくれるのだと
俺は 相変わらず 身勝手に

信じている







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