LOST and Found 1

1 逆光線の向こうに



***
早々と店じまいした四のパブのカウンターに
バージルと四は並んで腰をかけている。

ゆっくりグラスを揺らしながら、 四は言葉を選ぶようにして語り始めた。

―― あの日、俺は大好きな兄貴をふたり、いっぺんに失ったんだ・・

がむしゃらに動き回ったところで、兄貴は見つかるはずもない。
弐伊も、戻ってはこないだろう。
それでも 俺は 走り回らずにはいられなかった。
月を帳消しにする暗い森・・・俺たちにとっちゃ、暗さなんて 問題ないがな。
けど、結局、行き着く先は 村はずれの滝のある泉。
後ろの村の喧騒など知らぬとばかり、
そこだけはいつものように 月明かりを集めて
水晶の妖しさで 光り、ゆらめく。
あの 光の扉の向こう側の、俺のまだ知らぬ世界で 兄貴は消えた。
そして 弐伊は 扉に背を向け、去ったんだ





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