LOST and Found 4

弐伊と四 ♪海空:光闇世界


***




周辺の山を見下ろす空き地に 弐伊は抜け殻のようになって座っていた。
「弐伊?」
四の呼びかけに振り向かず どこか遠くに目をやったまま弐伊は応えた。
「四・・アイツが消えたのは 俺のせいなんだ。
俺は アイツを 殺してしまった・・」
「これは 事故だ。闘う定めにある俺たちがいつ出遭ってもおかしくない事故だ。
それに まだ 死んだとは 限らない・・・」
弐伊は不思議そうな表情で振り返った。
「おまえ・・・俺を責めないのか。なぜ俺だけが戻ってきたと責めないのか」
「お・・俺は・・
弐伊、これから俺が兄貴のかわりに弐伊とチームを組む。
俺をパートナーとして 認めてくれ」
「おまえ、 自分がなに言ってるのか分かってるのか。
パートナーなんて 気の合う奴ならだれでもいいが
兄貴の代わりはいないんだぞ!
・・・いや、こんなこと おまえに言えた義理じゃないよな、すまん。
他でもない、おまえから兄貴を奪ったのは俺なんだから」
「だから!俺は・・・俺は 兄貴じゃなくて 弐伊のそばに いたいんだ!」
四の頬に拳がとんできた。
「いうな!てめえの兄弟だぞ!いまのおまえの言葉、ネロへの侮辱だ」
「ちがう!兄貴は身内だから、家族だから・・生きることも、そして見送ることも、
覚悟ができてるものなんだ。・・・そうだ、覚悟だ。
その時はつらくても、思い出にかわるのにそんなに時間はかからない。
けど、パートナーへの想いは別だ。今の弐伊が、兄貴を想う気持ちだよ!」
再び容赦のない拳がとぶ。
四の視界がぐらっと揺れた。
それを振り切って起き上がろうとした四を 弐伊は馬乗りになって押さえ
さらに打ちのめさんと 拳をふりあげてきた。
四はとっさに腕で顔を覆ったが、その拳は落ちてこない。
見上げるとやり場のない哀しみと後悔に満ちた弐伊があった。

「前に・・・」
左手で四の襟首を掴み、右手は拳を握ったまま
弐伊が小さく、ゆっくりつぶやくように口を開く。
「前に、さらに西の国の小さな修道院で 壁に描かれた絵を見たんだ。
自分達の主を護ろうとする天使だ・・・美しく、光に溢れた天使だ・・
俺は、俺は、魔族なのに、こころから感動した・・・その天使に アイツは似ている。
それは好きだとか、嫌いだとかそんな次元のものじゃないんだ。

おまえたちのように家族というのを全然知らない俺は
自分以外のものにあまり興味がない。
うれしいとか、楽しいとか、そんな感情もどうだっていいし、
むしろまわりに影響されるのがわずらわしいとさえ 感じるところがある。
けど、アイツはそんな閉ざされた俺に明かりをさす窓をひらいてくれた。
そんな気がする。
アイツは俺の心の一部だった気がする・・」

ココロの欠片を失って 真っ暗なせまい箱の中、うずくまる彼を四は想像した。

「弐伊?・・兄貴を探す? そうなら、俺も一緒に・・」
四の声でようやく弐伊はまだ自分が四を押さえつけていることを思い出したようだった。
「血が・・」
弐伊は指で四の唇をなぞった。
しばらくまじまじと彼を見つめていたが すっと横に座りなおし、やがて立ち上がって言った。
「四、すまなかった・・・俺はここを出る」
「人間として暮らすのか」
「俺は純粋な魔族だ。それを誇りに思っている。
だけど、もう誰かとチームを組むのはご免だ。
一人でいながら、ちゃんと俺の役割を果たして行こうと思う。
長に許しをもらってくる・・・」




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