着信音はやさしく

§4 (音楽を流します)



***
四への仕事の依頼は中米の某国政府機関からで、
麻薬の取引を秘密裡に処理して欲しいというものだった。

あれから数杯 バーボンを飲んで
鬱々とした気分から逃れようとしていた。

「あっちの女は熱いからなぁ、帰りにちょっと・・」

とりとめもない事を考えることで自分を楽にしようとしていた。
笑おうと思った。
けれども 楽になるために倒れこんだ寝床の上で
そんな嘘っぱちのひとり芝居の虚しさを
また 感じるのだった。





携帯電話を離していない自分がいた。

携帯電話は ただの小さな 静かな箱だ。

青い点滅とともに やさしい電子音が鳴った。
ガバッと起き上がり、ゆっくり 応答する。

「おう、どうしたよ」
「四兄ぃ?ごめんよ、返事遅くなって」
「かまわねぇよ。 なに、東海岸行くって?
いいねぇ、土産話まってるぜ」
「行っていい?」
「いいにきまってるじゃねぇの。
色んなもん 見てきたらいい。ただーし、危ないことすんなよ」
「そっちへ」
「?」

扉の外でコトリと音がした。

「四兄ぃのとこへ、行っていい?」

四は扉を開ける。

「残念だな、今晩はちょっと忙しいんだが・・・しかたがない。
ちょっと 付き合ってやるよ」

そう言って バージルの頭をクシャっと撫でた。









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