冷たい手

§1 音楽を流します




(パブ:夕刻 * 四とバージル))

「あれ? 今日はひとり?」
「うん。ダンテのやつ、ダンス習い始めたんだ」
「ダンス! ・・・何飲む? ミルクシェイク?」
「うん。 ・・・タップダンスだって。」
「へぇ、そりゃまた・・・」
「もうすぐ卒業パーティだから あいつのスーツ借りにいったんだよ。
その帰りに 道でフィドルに合わせて踊る人がいてね、
あいつ、もう のぼせあがっちゃって
これだぁ!なんてさ。
即行 教室見つけてきやがったんだ」
「月謝とかどうすんの」
「それが  おっかしいの。
そこのセンセイに あら、あんたかわいいわね、とかいわれてさ
調子こいて 10ドルにしてもらったてさ。 10ドル!」
「あってないような月謝だな。
あとで 高くついたりしないか?」
「しらね。 なんかあったら 弐伊にいいつけてやろ。」
「いじわるするな、バージル」
「もう うきうきしてるんだぜ。
部屋でもバタバタ バタバタ。うるさいのなんの。
アヒルかっつーの!」
「アイツが楽しそうにしてると なんだかおまえ
機嫌が悪いな。 妬いてんのか、ははっ。

とにかく、一件仕事いってくれ。
街外れの金持ちに憑りついた悪魔祓いだ」

***

(アパート)

「あ、おかえり 兄貴ぃ!
今日はごめんな。次 僕いくから。
どうだった、敵さんは」
「たいしたことねぇ・・・」


(画:CAN)

「なあ、兄貴ぃ、 こんどいっしょに行こうよ。教室」
「やだよ、なんか くねくねしてて」
「センセイがさ、ご家族は・・・とか聞くから、
双子の兄貴いるんですっていったんだ。
そしたら大喜びでさ」
「なんで・・・」
「綺麗な子がもうひとりいるなんて・・・っていってたぜ。
やった、はじめていってもらった。うはははは・・・
でな、 一緒にいらっしゃいよ、って」
「け、あの おやじ・・・」
「でもダンスはうまいぜ。
大きな舞台もつとめてたんだって。
とにかく楽しんだよ!
なんだかね こう 血が熱くなっちゃうってかね。
もしかしたら 僕の前世は踊り子だったんじゃないかって・・・」
「ばーか。・・・ま でも おまえがどうにかなっちゃうのも困るから・・
ちょっと 付き合ってやても・・」
「やった! 案外で兄貴の方がダンスのとりこになったりして・・」
「ならん! それよか おまえ だれかパーティの相手、みつけたの?」
「あっちゃ・・・やなこと おもいださせるな・・
このあいだ メアリにはふられた・・・目あったから いけるかな、っておもったけど」
「俺は サラを連れてくことになったよ。」
「いいね、兄貴はよりどりみどりで・・・なんでかねぇ〜・・・
じゃ、明日、学校が終わったら、行こうぜ、教室。」






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