悪魔に恋した神様

§6 梔子薫るときに@






「のぉ、フレッガ? わし また東の国へいってもいい〜?」
オーディーンは 刺繍をしている妻のそばに横になり、
彼女の衣の裾を ぴらぴらとめくりながら 言った。
「例の魔族の者ですか?」
「うん、もう3年も会ってないよ。だからね」
「また こてんぱんに振られますわよ。
そうそう、わたくし特製の媚薬でも おもちになる?」
「ほんと!? くれくれ!」
「冗談です。あれはよほどのときにしか使えませんの。
歴史を動かすほどの恋のためのものですから 
戯れにだすわけございませんでしょ」
「妬いてんの?」
「いずこの神も奔放でいらっしゃるから。
どなたに恋心を抱かれましょうがかまいませんわ。
わたくしもご一緒しようかしら」
「だめえ!ぜったい おまえも あれが好きなるから。
夫婦で男のとりあいとか 洒落にならんもん
「わたくし、2500歳も年下の男なんぞに興味はございません。
あなた、そんなことより、噂の双子の両親が スラブの竜神にとらえられたのをご存知?
「ほぉ! 知らん」
「母親は人間族でも特殊な巫女でございましょ?彼女に横恋慕ですってよ」
「ほぉほぉ、そういう話題はさすが 早いのぉ」
「それはもぉ、女神の間でいちばんの話題ですわ。
竜神のエリアはなにかと揉め事が多ございましょ?
ふたりを呼びつけたそうよ。夫はなにせあのスパーダの魂を継承しているわけですから
理由はなんとでもなりますわ」
「ふんふん」
オーディーンは興味津々だ。
「でも 種族を超えた愛を誓った夫婦。
竜神の思うようにはなりませんわ。
かわいそうにふたりもろとも・・・」
「ひどいのぉ・・」
「さらにひどいのは それを彼の地の悪魔の仕業にしたって話ですわ。
魔族の者たちには絶対に知れてはなりませんの。
神族の汚点になりますもの。ほんとわがままも度がすぎますわ」
「正義もへったくれもないな」
「神と魔は対極にあるものですから 魅かれるのでございましょうか」
「そうそう!だからさ、わしが アレに魅かれるのわかってくれる?」
「どうぞ ご自由に」
「しかし、双子はまだちいさかろうに」
「こどもたちが苦汁をのまされるのも 結局は時と運命のながれにしたがっているだけ・・・」
「そこで 護り人が登場というわけか」
「そうね、 あなたの彼もきっと・・・」
「とられるの?やだなぁ。
よし、やっぱり いまの内にわしの虜にしちゃお。
えーっと、なにかおみやげ・・」
「篭の中にダイムのキャンディがありますからどうぞ」
「ああ、おまえ やっぱ、いい女!じゃ、ちょっと行ってくるねっ」





「まるで、おねだりするこどもだわね・・・
じゃ、あたくしも 好きなようにいたしましょ」

***







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