闇の王〜サイドストーリー
¶ 恋人たちのプロセス

§1
   





「更紗・・・って

知っているか?

まっさらな
白の布に
繊細な曲線で描かれた
草花が
少しづつ 色を添えられ
染め上がる

その草花は
王宮の庭のものでも
豪華にしつらえられた 花束でもない

普段は目もくれないような
傍らの風景に在ったもの

その優しさに気づいて
ヒトは
それを 欲し
布に 写し盗った

***

おまえが

この腕の中にいることが

こんなに
あたりまえになったのは

いったい いつからだったのだろうか

あまりにも幼く
弱く
それなのに
ねだるような眼差しが

俺を惑わした

お前の指がふれるたびに

ひと筆づつ
墨は刷かれ
形を成していく








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