「蒼い月」ダンテ篇

§2 もうひとつの青い目 音楽を流します )


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弐伊のうちは 町の中心からすこしはずれた 長屋の中にあった。

「おい、腹、減ってるだろ?」
そういってちゃぶ台のうえにてんでばらばらの 重箱を並べた。

芋や菜っ葉の炊いたものや干物を焼いたものなど、ごちゃごちゃと 入っている。

「すっげ。おっさん、これ つくったの?おっさん お金持ち?」
「いーや、 なんだかんだ 近所のおねえさんがたがもってきてくださるの。
頼んでるわけじゃないよ。まあ、ありがたいことです」
「・・・・。
おっさん 仕事はなにしてるの?」
「なんでも屋だ。
掃除屋、ってとこかな・・・わるぅいヤツのな。

さてさて、俺のことは おいおい教えてやるから。
おまえ・・・そうだな、まず 髪だ。
その頭じゃ ここじゃめだっていけねぇや。後で染めてやるよ。
それから ちょっと長いな。
切るか。 な?
長い髪か・・お前は人間の血が濃いのかもな。」
「人間の血?」

「おまえの兄貴はそんなに 長かったか?」
「ううん・・・・え? にいちゃんのこと知ってるの?  なんで!?
なんで!?」

「髪の毛の色はなんとかなるが、その目の色は まだ いじれねぇな」

そういって 弐伊はダンテのあごをしゃくった。
そして 自分の左目を少しいじると
そこに青い目があらわれた。



「兄の時間は停めた。
お前の時間をすすめること、
それが俺の役目だ」






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