「蒼い月」バージル篇

§14 魔の者の血 音楽を流します


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「さて、どんなにちいさく、簡単な小屋のようなものだといっても
うちが建つのに2、3日はかかろう。
そのあいだ、どうするかね。
山は冷え込むだろう。
弟のことも考えてやれ」
老人は バージルのからだにぶどう酒をたらしては それをすすりながら 言った。

「もらった金で、きょうのところは どこか宿にでも泊めてもらう」
「甘いのお。里のものには おまえたちの様はアヤカシも同然。
抜けるような白い肌、大きく光る眼はあれらにはまさに幽鬼よ。
おまえ達を泊めるような宿が あるものか・・」
「そのときは 社の床下にでももぐりこむさ!
あした、職人さんを山へよこしてくれ。」
「できあがるまでは毛革を張った仮宿でも使うかね」
「・・・」
「いったであろう? わしは情け深いのだと。
かわいいおまえに つらいおもいをさせたくないのだ。
よぉく おぼえておくがいい。
おまえがどう思うおうと おまえには わしが必要だ。
おまえ達が存在することを認めるのは この里にはおそらくわしだけだろう。
おまえは、火急の事態にあって、ほかのどこでもなく
この老人を頼ってきたではないか。」
「それは、ぼく、ほかにまだ知らなかったから・・!」
「それに きさまは 地道に金をえることを考えず
己の身を売った」
「それが一番金になるんだろ!いいじゃないかっ、おまえの希望に沿ってやったんだっ!」
「考えた末、とでもいいたいのか?
本能が欲する道を安易に選択してしまう
魔の者の血の為せるものなのか・・わしには 願ったり叶ったりだが、ふはははは・・
よいか、どんなに頭が拒否しても、きさまはもうわしからは逃れられぬ。

また 待っているよ、
いや、こんどは わしが迎えをよこそう」

なにか 言い返したかった。
こんな つらい 思いをしたのに・・・
(魔の者の血? おれ達はいったい・・・)

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「弟はここにいる。迎えにいってやれ」



襖をあけると ダンテは 自分と同じ年頃の少年といた。
「にいちゃん!おかえり」
「うん、待たせたね。
きみ、弟をありがとう・・・」
「いいえ、どういたしまして」

自分達と同じ目をもつネロにバージルは はっとした
「君は?だれ?」




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