「蒼い月」バージル篇

§20 光の壁 音楽を流します


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ネロの剣さばきは流麗でしなやかだった。
なにも 武器を持たないバージルは
ただ 本能的な動きで ネロの剣をかわしていた。

ネロは 本気だった。 
本気で 「あの方」のためにバージルを殺ろうとしているつもりだった。
しかし その「本気」が 操り人形のように 空虚なものであることは
理解していない。

一方 バージルは からだを翻しながら
緊張が喜びに変わることの不思議を感じていた。
「四兄ぃの剣だ・・四兄ぃに似ている」

ふたりの思いがどうあれ、 ひとつまちがえば  兄は 命を落としてしまう

「ネロ君、やめて、おねがい!」

ふたりのあいだに、どうちかづいたのか
ダンテが割って入りネロにしがみついた。

はねのけるのは たやすいはずなのだが
ネロにはそれができずに ただ戸惑っていた。

「にいちゃん、ネロ君を助けて。
あの おじいさんが悪い。
ネロ君はぼくたちの仲間のはずなのに、おじいさんが わるい おまじないをしたんだ。」

ダンテにしがみつかれたネロが 呻いている。

ネロが自分を取り戻してくれるなら、取り戻して欲しい。
バージルもまだ 少年なのだ。
ひとりでも多く 支えあう仲間に いてほしい。

彼はネロにちかづき、その手から剣をとると 傍らに置き、
ダンテと一緒に ネロを 抱いてやった。



ネロはさらに 苦しそうな顔をしている。

兄弟のからだが同調してオーラを出し始めた。
ネロの呻きは声にならず、身体はがたがたと震えている。

オーラが大きく輝いた瞬間
滝を中心に村を包み込んで周囲6箇所から光の柱が吹き上がった。
光は 6点を結んで壁となった。

ネロは兄弟の腕の中で 気を失った

***

壁の出現と同時に、村は里から忘れ去られた。
忘れられた、というより、存在がなくなったのだ。
過去にも、現在にも。

ただ ひとり、無道を除いては・・・

「これも 予想のうちよ・・・」

***





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