「蒼い月」バージル篇

§27 水晶の柩 音楽を流します


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ただならぬ邪気を感じて
3人は飛び起きた。

「ダンテ 起きろ!」
「剣をとれ! まちがえるなよ、ホンモンのほうだぜ」
「バージル、おまえの成長ぶり みせてもらうぜ」
「危なくなったら 助けてやるよ。」
「にいちゃぁん、なにぃ? まだ暗いよぉ」
「お客さんだ。 盛大にもてなすぜ」
「楽しいパーティの始まりだ」
「パーティ?なにそれぇ・・・」

空も 残月も真っ赤に染まっていた。

ダンテはそこに あのとき、
あの焼き討ちの日のドクロのような顔をした悪魔を見た。
一匹ではない。
獲物にたかる野犬のように
殺気立ち
秩序を失った 悪魔の群れだ。

ネロも四も手馴れた様子でつぎつぎにそれらを倒していく。
バージルも空気を裂くような剣さばきを見せていた。
「やるな」
四は目を細めていった。
バージルは嬉しかった。
ダンテは剣はまだまだだが 面白い動きで相手を翻弄していた。

やがて 群れは 片付けられた。
ほっとしているバージルとダンテの横で
「これからだ」
とネロがつぶやいた。
「にいさん、会えてよかったよ」
四が応えた。

「バージル、成長したな。 これを まっていたぞ」
空気を震わすような声とともに
岩壁のような 魔人があらわれた。
冥王 無道。

あらゆる 忌まわしい記憶が バージルに閃光のごとく蘇ってくる。
「彼には 触れさせない」
四とネロは 印を結ぶと彼らの内にある力をオーラにして 一気に放出した。

そのオーラに包まれて、バージルは一瞬その姿を消した。
姿を見せたとき
彼は水中花のように
水晶の柱に閉じ込められていた。



「なにするの!」
ダンテが悲鳴をあげた。
「にいちゃん! にいちゃん!」

「ダンテ、お前たちは 双子だ。
もともと 双子として生まれるべきだった。」

四が説明した。

「バージルの時間は停めた。
滝の裏に封印する。

時がたち、 おまえたちが あるべき姿にもどったとき
彼の封印は解かれ
ともに 戦うことで
冥王を打ち破ることができる。

それまで
逃げろ。
生き延びろ。
人に混じれ。
行け!!!!」

ダンテには聞き返すことができなかった。
無道の手がこちらに伸びてきていた。
逃げろ!
四の声に追われて ダンテは跳んだ。

後ろで ネロと四の戦闘が続いていた。
水晶に触れることさえできず 怒りに狂った冥王
力を出し切ったふたり

まもなく ふたりは 冥王のはなった 無数の赤い剣に貫かれた。

冷たく、時を停めた 水晶の柩で バージルは眠る。

森を跳びぬけながら ダンテは泣いた。
あまりにもきびしい 10歳の誕生日だった。


*バージル篇 おわり*




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