「蒼い月」双子篇

§12 終局 音楽を流します



ズズズズッと 振動が伝わってくる。
巨大化した無道が四肢をひらくと
圧倒的な力のエネルギーが放出された。

全ての希望、全ての生の力を無に帰す
負のエネルギー。

「つまらぬ足掻きは通用せぬ。
目覚めよ、魔の子よ。
本来の姿を取り戻せ。
本能に生きよ。
それこそが 己の解放!」

「そうだ。俺たちは 魔の子」
「そして ヒトの子だ。」
「弱さも、苦しみも、哀しみも、乾くような欲望もある」
「だから 強くなれる。 楽もあり、喜びも 達成の感動も ある」

無道の波動は 兄弟の前に雲散した。
無道の暴走がはじまった。

巨体に似合わない速さで
兄弟を叩き潰しにかかってきた。

はじめ 避けていくのがやっとだったが
「俺は 見切ったぜ、おまえは!?」
「いいよぉ! いつでもこい!」
「・・・ダンテ、おまえがいてくれて よかった」
「にいちゃんは 僕の 誇りだ」
「にいちゃんは やめろ」
「いいんだ。にいちゃんで。」
「さあて、なんだか わくわくしてきたぜ」
「おわらせるのが もったいないくらいだ」

「息合わせていくよ」
「オッケー」

ふたりが 左右に分かれると
間に 白光の鎖が現れる。
その鎖は次第に形作り
一人の光の魔人を現した。



「約束の子らよ。
わたしが 無道を止めよう。
その手の 剣で 道を開け。」

「あなたは 善の神?」
「我が名は 宿命。
しかし その形は その者の心が成す。
醜くもなれば 美しくも映る。
黒く濁ることもあれば、 澄んで輝くこともできる」
「宿命さん、なんか かっこいいよ」
「ふふふ・・・そうか。

さあ、ゆけ。
兄には月の剣を。
弟には太陽の剣を。」

ふたりの剣は形の同じ大剣になった。
バージルは青味を帯びた銀の、
そして ダンテの剣は 朱赤を帯びた金。

無道は びりびりと 震えて 動きが封じられた。
ふたりは とんだ。
その剣の切っ先は
まっすぐに 無道の胸のウロに向けられる。

底なしに見えた闇を突き抜け
無道の背中側に降り立った。

無道は 自身の無の闇に包まれだした。
まるで 体が裏返しになっていくようにみえる。

「終わったと 思うな。
光を残すならば 残せばよい。
そこには 必ず影があるのだから。
わしは 必ず 復活する。
わしは 眠る だけ・・」
そして 断末魔の叫びをあげたとき
光の魔人がそこにかぶさり
一粒の金剛石となった。



暗い空間に ふたりはいた。
バージルが金剛石をひろいあげる。
「ちっぽけなんだな。
こんなものが 世界を真っ暗に・・・」
「にいちゃん、見て、 下のほうが明るくなってきたよ。」
「ニンゲンが復活する。」
「ここは 人間の世界と 魔の世界の中間・・・
さ、帰ろう、僕達のいるべきところへ」
ダンテが バージルの手を引いた。
しかし 彼は動かない

「俺は むこうに いきたい」










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