「蒼い月」双子篇

§2 兄・おとうと 音楽を流します



******

「あいつは・・・無道は どこへ消えた?」
「弐伊は辺土だろうと言ってた。ニンゲンのこの世界と
魔族・神族の世界との隙間の曖昧なところだって。
そこで時がくるのを、力を蓄えながら待っているって。」
「時?」
「ぼくが成長し、兄ちゃんが目覚め、
ふたりが双子としての本来の姿と力を取り戻す時・・」
「それは、・・今?ははっ、なにも起こりゃしねえじゃねえか・・・
おまえも俺も、無意味な7年を過ごしてきたのか」
「な・・なにかきっかけが必要なんだよ、きっと」
「ふたりでようやく本当の力・・か。
俺ひとりじゃ だめっだったてことだな。
・・・そうだよな。
半分 あまったるい ニンゲンの血が混じってる。
でも 後の半分は強い 魔の血なんだ」
「そのふたつがあるからこそもっと 強く・・」
「なにもかも中途半端。
そういうことだな・・・・。」
「にいちゃん・・」
「あの人にもう少し 話を聞こう。」

ふたりは立ち上がると
小屋に向かった。
ゆっくり 歩きながら
バージルが訊ねた。

「・・弐伊って どんな人?」
「え?弐伊?
えっとね、見た目は冷静沈着にみえるけど
案外 ぬけてたり、かっとしたりするんだよ。
剣や体術を教えてもらった。
でさ、すごく女の人にモテモテでね
だけど・・・」
「だけど、何。」
「いや、里ではいろいろとお世話になったんだ。」
「ふーん」
「ぼ、ぼくひとりじゃ なにもで、できなかったなぁ」
「・・好きだろ」
「えー! そ、そりゃ にいちゃんも 弐伊も大好き」
「そうじゃなくて・・・ま、いいや。ふふっ」



ダンテは心のそこから兄のそばにいたい、離れたくないという気持ちで一杯だ。
でも兄はあやふやで不安な状況にあって、
そばにいてほしいのは自分ではないのだろう、と思えることが
すこし さびしくなるのだった。

「にいちゃん、前髪おろしてよ」
「やだ」
「にいちゃん!」
「やーだ。にいちゃんってよぶな」
「やだ!」

***

ふたりがそろって戻ってきたので
弐伊は少し安心した。

「話を聞きたい」
バージルが切り出した






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