境界線 <Chapter One>
¶第一章 真実の在処
  (BGM ON) Hagall

*剣の秘密〜il segreto della spada @神様の剣***

***

大人たちが キャンプを張っている横で、ちいさな 子供は 石蹴りをして遊んでいた。
それがババババッというエンジン音に驚いて、チリジリになって逃げていく。
蜘蛛の子を散らすとは このことだ。

大人も一斉にこちらに注目する。

ダンテはしまった、という思いで、少し外れた所に バイクを停めた。

一人、男が歩み寄ってきて手を差し出した。

「昨日カフェでみかけたね。
このグループのまとめ役をしているレイハンだ。
君は?」

言葉はスムーズに通じるようだ。

「ダンテ。
すまない、あの時から気にはなってたんだけど
こんなところで また会えるとおもってなくて・・
ちょっと 寄せてもらった。
あ・・・なんか 迷惑だったら、すぐに 行くけど」
「ああ、初めてのものに 対する態度としては普通だろ?
大丈夫。 来なさい。
待っていた」

(待っていた?)





レイハンが 仲間達にダンテを紹介している。

まず子供がわさわさとでてきてダンテの腰に まとわりついてきた。
そして さかんに 自分の胸をたたいて 何か言う。
自己紹介をしているのだ。

「そうか、わかった。
レイチェル、 シャルナーク、・・・アジス・・・」

ひとりひとりの名を呼んでやると、飛び上がって喜んだ。

そのうち 中のひとりがダンテが背負っている剣に目を留めた。

「※%#&??」

戸惑っている彼に助け舟を出したのは
深い皺をきざんだ 老婆だった。





「なぜ 神様を背負っているのか、って
訊ねてるんだよ」

穏やかな笑みをたたえた 女性だった。

「その 髑髏をあしらった剣を謳った歌が
私たちの間に 伝えられていてね、
こどもたちは 折々にそれを聞かされている」
「この剣が神様だって?」

「ようこそ ダンテ。わたしは アマヤ。
ここの 長老みたいなものだわね」
「レイハンは?」
「リーダーは 外の人達との交渉や仲間をまとめたりするんだよ。
代々の長老の役割は ただしく 歌を伝えていくこと。
その歌をうたうことを 許された 唯一の女が その役を担っているのさ」

「いま その伝説が目の前に顕れた・・・・
わたしは 大きな幸運に恵まれたのかもしれない。
星に感謝しなくちゃぁねぇ・・・・」
「それで・・その歌、というのは?」
「そうだね、きっと 今晩は歓迎の宴がひらかれるよ。
その時に」
「ぜひ 聞きたい」
「もちろんだよ! この歌は
『あんたたち』に 聞かせるためだったのかもしれないんだからね。

さぁさぁ、いらっしゃい。
ほんとにまぁ、かわいい シャーハンシャーだわねぇ」
「シャーハンシャー??」
それには答えず
アマヤはダンテの 背を押した。
「ほんと、 わたしの 若い頃にそっくりだよ」
そういって 自分の肩にかけていたスカーフを
ふわりと ダンテの頭から被せた。





スカーフはコバルト色の透ける布地で
金糸銀糸、そして赤をポイントに
すばらしい刺繍が施されていた。

「おやまぁ、美人の踊り子さんだこと。
剣士は舞にも秀でていたと歌にあるけれど
そのとおりだねぇ」

もうダンテは笑うしかなかった。
「そうだ、アマヤ、
『これは何?』って どういうんだ?」
「カクヴァ イエ トヴァ」

それから ダンテは だれかれつかまえては
「カクヴァイエトヴァ」を連発し
すこしずつコミュニケーションを図っていった。
しかし ボディランゲージがいちばんで、
特にこどもは
ガタイのいい ダンテにすずなりになって遊ぶのが楽しいようだった。





レイハンに頼んで 夕べのしたくを手伝えるようにしてもらった。
そのとき 訊ねてみた。

「レイハン、シャーハンシャーって、何?」
「諸王の王・・・という意味だが、どうした」
「いや・・・ありがとう・・・」


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