境界線 <Chapter One>
¶第一章 真実の在処
  (BGM ON) Hagall

*剣の秘密〜il segreto della spada A二千年の調べ***

***

 зaдy бapy aha kak йctohe
・・・・ ・・・・





男が膝に抱えたバイオリンを奏で
アマヤが謳い、若い女が 踊る。

焚き火に映え幻想的だが、メロディはどちらかといえば陽気で
テンポのいい言葉のリズムが流れる血に 同調していくような
不思議な感じだった。




ダンテは レイハンの横に胡坐をかいていた。

「何語?」
「わからない・・意味は 伝えられているが
もう 呪文に近いものだな。

なにか 他の種族の人ならざるものの 唸りを
人の文字に置き換えたようなものらしい。
だから 自然と置き換えた人間の母国語に近い音になっている」
「置き換えた人間というのは?」
「俺たちの とおい 先人だ」
「とおい・・・」
「そう、2000年の遠い時の向こうだ」
「バイオリン・・・だよね。
チェロのように 抱えているけど」
「あれが 俺たちの伝統のスタイルだ。
というより、本来 バイオリンはアラビアでその原型を生み
それが伝わったものだが 膝に抱えるものだったんだぜ」

「昨日の夜・・・俺、バイオリンの音を聴いた。
音というより なにか 語りかける ・・・そう、言葉だった」
「なんと 言っていたんだ?」

「父の姿に出会う・・・とかなんとか」
「君の父親は・・・どんな人だった?」
「よく覚えていないが、剣の使い手だとは聞いている。
それに・・」
「それに?」
「・・・人じゃない」

そこで ダンテは 話題を変えた。
「俺はバイクでここまできたんだが、
レイハンたちのグループは歩いているんだろ?
老人や子供までいる。
なのに すごく 早く移動するんだな。
どうなってる。 不思議だよ」
「慣れてるからな」

慣れていると言われても 物理的に無理な気がした

「不思議か?
そうだな、俺たちは 人型をしていながらその実体がないのかもしれないぞ?」
そういって レイハンは笑ったが
ダンテには なにか そのほうが 自然なような気がした。

自分も半魔であるなら彼らがスピリチュアルな存在であっても
おかしなことではないように 思えたのだった。
その不思議さがダンテには 密かに愉快に感じられた。





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