Pride

2 強引と懇願の間 (♪: Breeze:あおいとりのうた)




「ダ・・ダニエル、なんだよ、なぜ、俺?」
「打ち上げのパーティだよ。」

ここの会場設営のメンバーを決める時に
ダニエルはほぼ無理やりダンテを誘い、しばらく一緒に活動していた。
ダンテにはそれなりに楽しい数週間だった。



いつも兄弟で行動していた
そのことを ダニエルは
「ちっこいガキじゃねえんだぜ。
ママにひっついた子供みたいに兄ぃちゃんについてるなんて おかしいって」
と皮肉混じりに言った。

ふだんから子ども扱いされることにちょっぴり不満があったダンテは
「べつに 兄貴にべったりってわけじゃないさ」
と強がってみせたのだった。

「南へいこうぜ。
サーフィン、やったことある?」
「ない・・・」
「おまえならすぐできるって」
「俺だけ・・・?兄貴は、いっしょに・・」
「だからぁ、おにいちゃんとばっかいたら おかしいじゃん。
それともなに おにいちゃんに抱っこしててもらわなきゃ寝られないの?」
「ん・・・んなわけ ねぇって。」
「書置きしていけばいいよ」
「だからさ、ダニエル、 なんで俺・・・」
「・・・おまえに興味あったからさ」
「興味?」
「なんか 楽しそうじゃん。
それに ・・・あったかそうだし」
「あったかい?」

「もう出かけるよ。車・・・・より
跳んでいったほうが速いか?」
「跳ぶ・・・」
「おまえ半分悪魔だろ?」
「・・・」
「べつに みんな知ってることだし。」
「だから、何・・・」
「ふん・・・。いいから さっさと出かけようぜ。
そうだ、兄貴への手紙 俺に書かせて。」
「は?」
ダニエルはダンテを無視して
さっさとメッセージを書き
アパートの扉に貼り付けた

「2日間の休日
弟君、お預かりします

ダニエル・オセ・セリアス」

「あのさ、俺ボードとかもってないよ」
「俺の貸してやる。
スゲェ楽しいって。 持ってくの、着替えと少しの金でいいから。」
ダニエルは急いていた。
まだ戸惑っているダンテを尻目にひとりで嬉しそうだった。
「そんなに急くなよ・・・」
「見せたいものがある。時間がないんだ。」

ダニエルはダンテのために少し長めの板を出してくれた。
バッグに入れ背負う。
「んじゃ、ダニエル、俺がおまえを抱えるから、跳んでく?」
「いや・・・たぶん 移動は俺の方が速い・・
いこうか!」

ダニエルは ダンテの手首をつかむと
ふわっと飛び上がった




まるで空間の隙間を抜けるように ダニエルは飛んでいた。



「おまえ・・・何者?」
「おれは 俺・・・でいたい」
少し笑ったが、口許に淋しさが現れているようにダンテは感じた
「風もおきざりにしてるようだ・・・キッモチいい〜〜!!」
「そう? ダンテそういってくれると 俺、うれしい・・」
(なんだよ・・強引なわりには・・おかしなやつ)

二人が到着したのは小さな漁村のはずれで、
石のかたまりのような建物の軒先にはすでに灯りがともっていた。

「この先のロスメン(安宿)に泊まるよ。
荷物をおいたら とりあえず ビーチにいこう
陽が落ちちゃう・・・急ごう」
「な・・なんで」
「いいもの見せるよ!見て欲しいんだ」





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