卒業
§7
Midnight Kiss@  (♪煉獄庭園) 

・・・・・
民族の感情を構成するものに
彼らが根付いた土地の空気中の水分量は
確実に 関係していると思われ・・・
・・・・





「おおおおおおお!!」

「こんどは何事だ!ヤロウ!」
大学へ提出するレポートにかかる バージル。
隣の部屋では ダンテが荷造りをしているはずだ・・・

ただでさえ隣が気になるバージルなのだが
突然の叫び声にタイピングの手も止まる。

扉を叩き壊すような勢いで開く

「おめ 何やって・・・」





部屋中にひろがって まとまらない”荷物の上”にテントが立っていた。
「ダンテ?」
「あ、バージルゥ、いいよ、これ、入る?」
網の窓を開いて ダンテが満面の笑みを覗かせる。
「犬だ・・・」バージルは思った。
うっかり笑いそうになったがぐっとこらえ 叱り飛ばす。

「おまえ なんで部屋でテント広げるんだよ」
「ワンタッチのテントのチェックだよぉ。
いいから 入ってみなよ。ほらっ」





下に物がちらばったままでテントがのせてあるものだから
安定しないし、なにより なにか壊してしまうのではないかと気が気でない。

「何で下を片付けてから 拡げないんだよ」
「ん〜〜〜、キャンプを張るのは 平らな草の上とは限らない。
どかせないゴロタ石の上の場合もあるだろう。
その訓練である!」
「屁理屈だ」
「いいじゃん。どぉ?
なんかさ、こうやって ふたりで狭い所入ってると
隠れてるみたいで楽しいよな」
「うん」 と いってしまって バージルは慌てた。
「いや そういこといって 遊んでる場合じゃないだろ?」
「あはは、やっぱ そぉ?
このテント広げるのもたたむのもワンタッチのはずなんだけど、
たたむのがよくわかんないんだ・・・・
だから チェックしておこうと思ったんだ」





二人はテントから這い出すと 説明書を睨んだ。
「いったんつぶして折り込んでいくんだな。
よし、貸してみな」
バージルがいったが ダンテは聞かない。
「あ、俺がやるぅ!」
テントシートとパイプが一体になっていて
バネのように柔軟なパイプを押し込む。
しかし パイプはいうことをきかず勢いよく跳ね返ってきて
ダンテはしこたま額を叩かれた。
「いってぇぇ!!
なんだ テントのくせに!」
「あ、やめろ、力任せにすると 曲がる・・・!」
「・・・・曲がった・・・・いいんだ、反対に曲げれば・・・」
一本のパイプはかるくS字になっていた。
「まだ 使ってもないのに・・・」
「いいよ、バージル、自分のことしなよ、
俺ちゃんと 片付けるから!」
「意地っ張り・・」



***



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