続メッツァにかかる月

§11 オーディーンとニィ
小さな入口からは想像もできないほど広い氷穴は自然の迷路だった。
それを迷わず行くオーディーンの後を さすがのニィも少し不安な心持でついていった。

ヒカリゴケのぼんやりした緑色の光の中。
振り返ったオーディーンはニィの表情から察して つっと手をとった。
「大丈夫。わしの隠れ家だ」
岩棚にちゃんと松明がおさめてあり、オーディーンは 手をかざして ポッと火をつけた。
「魔法?」
「カミワザ」

ほどなく小さな部屋ほどのスペースにでた。

「ようこそ、わしの隠れ家へ。 君は初めてのお客だ」
かがり火をともすと 部屋全体がオレンジ色に染まる。

オーディーンは部屋をぐるっと見回すとほっとしたように言った。
「ここも久しぶり・・・だ」





後ろから腕が回ってきて 首のあたりに ニィが額をつけるのを感じた。
しばらくその手をいつくしむように撫でていたが 
天井を見上げ2度大きく息をすると、
想いは堰を切って溢れ出す。
ぐるっと体を返すと ニィがフッと息をもらすほどきつく抱き寄せ 口づけをおとした。

互いに貪るような 激しく 長い口づけだった。
これまでのすべての時間が 埋まっていく。
オーディーンの手がニィの髪を掴みかき回す。
ニィの手はオーディーンから少しでも離れまいとしがみつく。
舌をからめ 息をひとつにしても
いまだ ふたりを隔てる服がもどかしい。

くちづけたまま オーディーンはニィのコートをとるように促す。
ニィが少し体をよじると、コートはするっと足許に落ちた。
ニィもオーディーンのマントをとろうとして ふと顔を起こした。
「これ・・」
「君のボタンだ」
オーディーンは自分でマントを取るとそれをあおって ニィの背にまわした。
「横になって」

ニィが自分でベストを脱ぎ、ベルトを外す。
オーディーンは彼の肩を押さえるようにして横たわらせた。
ニィをまたぐように膝をつくと、 合わせの衣装の帯を解く。
あらわになる彫刻のように美しい胸、
そして
スパッツの上からもあきらかなオーディーンの猛りに
ニィはおもわず 息を飲む。 
自分の胸をオーディーンの手のひらがゆっくりなで下ろす。
それだけで全身に電気が流れるようにしびれる。
恋い焦がれ続けた顔は そこにある。
しかし オーディーンは 微笑んで見つめてくるばかりだ。
ずっと見つめあっているのはなんだか気恥ずかしく、おかしくもあった。
おもわず吹き出すと ニィはささやいてみた。

「なに」
「ん? 本物かなって」
「なにそれ」
「さわったら また消えてしまうかもしれない」
「もう 消えない。 だから・・・」
ニィは手をのばすと オーディーンの髪に差し入れ まさぐった。
オーディーンはゆっくり肘を折り
そして ふたたび 唇を重ねた。
ゆっくりと味わう キスだった。




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