続メッツァにかかる月

§11 オーディーンとニィA (音楽を流します)






肌が熱い。
この肌も この所作も この・・・重さも ずっと欲しかったもの。
パズルがかみ合うように 自分の隙間をすべて埋め尽くしてほしい。
ぬめり、吸い付き、這いまわり、あるいは軽く食(は)む。
口への刺激は下半身の疼きになる。
たまらず顔をそむけて声をあげ、ニィはオーディーンを押し返そうとした。
その手はすぐに捉えられ、そのまま床に縫いとめられた。
唇は頸から胸へ降り同時に手がわきをつたい まだ腰にひっかけられているパンツをつかんだ。
わずらわしいといったふうに、手は乱暴にそれをはがしにかかる。
自然とニィの片手はそれに抵抗して見せたが
オーディーンに簡単にはじかれてしまった。
さらけ出したのは体だけではなく 潜んでいた欲情。
さらに刺激をうけようと 足はあがり 腰が揺れた。
オーディーンはニィの中心をとらえて撫で上げる。
ニィが「クーッ」と喉の奥から悲鳴を上げた。
胸をいたぶっていたオーディーンが顔をあげ
「いけよ」と低くささやいた。
耳に届くその声音は ニィに一回目のとどめをさす。

薄く目を開いたニィは ゆらゆらと揺れる炎を見た。
幻想的で 漂っているような気分だ。
しかし それもすぐに次の刺激で暗転する。
オーディーンはぬれた手で ニィの後腔をひらく。
オーディーンは性急だった。
「すまん・・ニィ君・・」

オーディーンはニィの足を高く上げさせる。
ニィはオーディーンの切っ先があてがわれるのを感じた。
ニィはオーディーンの手を求めた。
その手をオーディーンがしっかりと とり
そして ふたりは 指を絡める。

軋むようにオーディーンが侵入する。

「うぁああ」

上がってしまった声が思わぬほどあたりに響いて
ニィはきつく唇を噛んだ。

ゆっくり オーディーンは自分をニィにうずめていく。

ニィには 自分を裂くようなこの痛みが
オーディーンに与えられるこの痛みこそが
これまで ずっと欲しかったもの。

ニィの指がより強く自分の指に絡んでくるのを確かめながら
オーディーンはさらに ゆっくり 侵入してゆく。
そしてすべてうずまったとき、 そっと ニィの髪を撫でた。

目を開けると オーディーンと目があった。
涙で潤んでしまったのか ぼやけて見える。
炎がつける陰影で オーディーンまで揺れて見えた。

「これを ずっと 俺・・ 欲しかった」
「そうか。 わしもだ」

ニィはまた 目を閉じた。
足らなかったものが 今 満たされたように感じられた。

オーディーンがふたたび ゆっくりと動き始める。
目を閉じていても
ニィには炎が見える。
炎は渦となって ねっとりとまわる。
すこしずつ 二人の体がなじみあってくるのを感じる。
それにつれて オーディーンの動きが早くなってきた。

炎は目の中で明滅する。

「はあっ・・はあっ・・・・・」

自分の声さえどこか遠くに聞こえる。

ぐいっと さらに足をもちあげられたかとおもうと 
顔にオーディーンの髪が流れ落ちてきた。
オーディーンはさらに深く ニィを貫く。 

「ふっ・・」

オーディーンの呻きが聞こえ互いに同じものを感じているのに気づく。
愛おしさがあふれてくるようだった。
ニィはオーディーンの首を手繰るように引き寄せ、口づけを求めた。
オーディーンも 求めた。

肌が打ち合う音が 淫猥にあたりにひびく

「うぅっ・・」

ニィは2回目を放出してしまった・・
オーディーンがチュッと軽いキスを送ると
ニィはすこし すねたような顔になった。

オーディーンが肘枕で ニィを見下ろしている。

「俺ばっかり」
「どうだ まいったか」
「うるせ・・・もう しねぇ」
「ほんとに?いいの?」
「・・・・」
「ああ、まだ 終わらせない」

オーディーンの少し響きを残す声色は 狼の低い唸りにも似ている。
すべてのものに眠る 野生が いまは 牙を剥いている・・・

かがり火がパチンと音をたてて はぜた。

ニィは全身の血がぞわっと沸いたように感じた。
それは 次への 期待だった。
片足を腕にとられ そこにオーディーンが割って入ったかと思うと
いっきに 貫かれる。
捉えられ、逃れられない 自分は 獲物だった。
・・・そして 決して「逃げたくない」獲物だった・・

グイッと引き起こされてオーディーンの胡坐の上、
寸分の隔たりもないように ふたり密着する。
コキュコキュと刺激を受けて ニィはトロリとみだらな蜜を漏らす。
硬く立ち上がった胸の突起は オーディーンの指の中。
首筋に 這う唇・・・

「神・・俺 狂っちまう」
「愛している・・・離したくない」

はっと 目を開いたときにニィが見たのは燃え上がり 火花を散らすかがり火。

「愛している」という 言葉がこれほどうれしく響いたことがない。
炎が滲む。
ニィはオーディーンの手をとり、キスをする。
何度も、何度も・・
オーディーンは言葉の代わりにニィの手を握り返す。

這わせられ 引き寄せられ 揺らされる。
ニィは上がる声を もう 抑えない。
突っ伏し、腕に顔をうずめ 果てた。
やがて 自分の中で オーディーンが脈打つのを感じた。
オーディーンが出てゆくのは なにか 遠くに感じられた。






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